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受賞者一覧

令和3年度/第43回受賞者

食品産業部門<経営革新タイプ①>(2021)
農林水産大臣賞

株式会社秋川牧園

代表取締役社長:秋川 正
所在地:山口県山口市
業種:鶏肉・鶏卵を中心とした生産卸売事業・直販事業
> 公式ホームページ

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【功績申請の概要】

  • 1972年(個人創業)に鶏卵生産からスタートした当社は、「口に入るものは間違ってはいけない」という理念のもと、安心・安全な食を提供するため、1989年にポストハーベストフリーコーン(収穫後の保管で農薬を使わないコーン)の輸入ルート開発や、世界に先駆けて若鶏の無投薬飼育確立などを行ってきた。さらに、主力の鶏肉・鶏卵にとどまらず、乳牛・黒豚・和牛・野菜の生産、冷凍食品・牛乳・ヨーグルトの加工まで自社で定めた安全基準の中で生産・加工を直営農場・直営工場で手掛けている。
  • 販売は卸売だけでなく、自社会員制度を設け、全国約15,000世帯の会員に自社製品を届けている。
  • 農業分野において難しいとされた企業化をいち早く達成し、24年前に総合農業分野で日本初の株式上場を果たした。多岐にわたる品目で生産・加工・流通までを一貫して全国展開しているのは当社だけが成し遂げている事業であると自負している。

(経営近代化・合理化、生産性の改善向上等)

〇新たな事業活動の展開による経営の向上

・創業以来、生協を主とした卸売事業がメインだったが、2000年より「会員制宅配」(直販事業)を開始。自社で生産・加工した商品を中心に、当社の定める基準に基づいた商品を販売。山口と大阪エリアは自社トラックで配送し、それ以外のエリアでは宅配便を利用し会員に安心・安全な食の提供を行っている。

・2014年から直販事業の拡大を主眼にブランディングを推進。鶏肉・鶏卵・乳牛・黒豚・和牛・野菜という多岐にわたる分野をすべて自社生産しており、冷凍食品・牛乳・ヨーグルトの加工も自社で行っている。「生産」「加工」「流通」を1社で行っていることを“YOUR FARM~あなたの農園”と表現し、「生産者」であり「加工業者」であり「販売業者」であることを最大の武器として、会員会報誌の制作、SNSの発信等の広報活動に活かしている。

・会員数は2021年7月現在約15,000人で、2020年度の直販事業売上は約14億3000万円となっている。

 

〇設備導入、工程見直し等による生産性の向上

・鶏糞は堆肥舎で何度も切り返しを行い、良質な鶏糞堆肥を作って自社事業に活用している。そのひとつとして、2009年度に「飼料用米」生産を地域生産者グループと開始した。鶏糞堆肥を生産者に配送を含め無償提供し、収穫した「飼料用米」は全量買い取り、当社の養鶏で飼料として活用している。この「循環型農業」の取組みは、水田の有効活用、日本の飼料自給率の向上はもちろん、非遺伝子組み換え飼料、ポストハーベストフリーコーンを徹底して実行する当社の養鶏において、飼料米は重要な役割を果たしている。

・鶏糞堆肥を当社の野菜生産にも活用している。2009年に設立した子会社㈱ゆめファームでは、当社の鶏糞堆肥を使用した栽培時化学農薬・化学肥料不使用の有機野菜を年間およそ50種類生産・出荷している。

 

〇市場開拓、販売拡大の取組み

・創業以来、こだわり系の生協や地元山口の量販店への卸売がメインであったが、2000年に直販事業を開始し、さらに、ブランディング戦略を開始した2016年頃より、首都圏を中心として、オーガニック系の量販店および高級食料品店との取引が本格的にスタートした。キラーコンテンツのひとつとして、2016年度に自社製造牛乳100%で製造した、牛乳の風味をふんだんに生かした自社製造ヨーグルトを開発した。独特の味わいが好評で、ヨーグルトの引き合いをフックに首都圏の量販店との取引も拡大し、2020年度は2015年度と比較すると、量販店での売上合計が1.6倍にアップしている。

 

〇独自の製造方法及び技術研究開発

・1972年の創業以来、「口に入るものは間違ってはいけない」をモットーに、安心安全な食づくりを続けている。中でも、1989年に当社の会長と社長が全米を長期間調査し、ポストハーベストフリーコーンの輸入ルートの開発に成功した功績は、当社事業だけでなく、日本における安全な食づくりへの大きな功績のひとつと自負している。

・飼料用米の生産では、地域循環の仕組みと多収穫技術の確立に向け、地域の農家と「秋川牧園と24の生産者グループ」を構築した。鶏糞堆肥の無償提供・飼料用米の全量買取りや、生産者の技術・生産力の向上を目的とした「視察会」を農研機構・山口県畜産振興課・山口県農業技術センター等を迎えて年2回実施。この取組みの効果は高く、秋川牧園の生産者グループから農林水産省主催の「飼料用米多収日本一コンテスト」で上位入賞者を輩出している。また、2016年度には350トンの飼料用米の保管庫を2基設置し、生産者の負担と流通負担コストの削減に成功した。飼料用米の取組みでは、2020年度の農林水産省主催「ディスカバー農山漁村の宝」で準グランプリを受賞した。

・冷凍食品の加工場においては、化学調味料・添加物・着色料等の化学合成添加物を一切使用せず、「家庭の台所にある素材と調味料だけを使って作る」をモットーに冷凍食品の製造を行っている。副原料も国産小麦をはじめ、塩は沖縄の天日塩、揚げ油はNon-GMOの圧搾菜種油を100%使用している。

・当社直営の冷凍食品工場では鶏肉を中心とした加工品を製造している。鶏肉の販売における需給バランスを加工品で調整することで、鶏肉全体の部位ごとの需給の不均衡を大きく改善するとともに、安心・安全な冷凍食品という付加価値を付けることで事業の大きな柱のひとつとなっている。

 

〇労働環境の改善、福利厚生の取組み

・従業員に安心・安全な食生活で健康な暮らしを送ってほしいとの想いから、社内で働くすべての人に自社製品を中心とした安全・安心な食材のみを使った手作り給食を300円(半額会社負担)で提供し、また、自社製品は常時、特別割引価格で購入可能としている。

 

〇従業員の資質の向上のための取組み

・上場(1997年)前から、雇われ農業ではなく、従業員一人一人が経営者として参画できる仕組み「経営参加制度(持ち株会)」を作り、主体性をもった職場づくりを行っている。

・生産部門、事務部門、製造部門それぞれの相互理解を深めるために、部門間の応援体制を頻繁に実施。

 

外部との連携)

〇社外との連携による経営改善措置等

・「畜産・酪農収益力強化整備等特別対策事業」を活用し、2018年に鶏肉加工施設(冷凍食品工場)を増設し、焼き・蒸し加工の生産性を飛躍的に上げることに成功。鶏肉加工品の売上は計画時(2015年度)対比で2020年度は36%アップした。また、香港を中心とした「焼鳥」の輸出事業にも取り組むことができた。

・農研機構の研究者とともに、飼料用米の稲の研究にも参画し、病気に強く、多収穫につながる稲の開発に取り組んだ。全国各地の勉強会にも講師として参加し、研究成果の発表を行っている。 

(食品表示法への対応)

〇『上級食品表示診断士』を保有する当社の品質管理室担当者が、毎月、勉強会を実施。製造、営業、直販事業、マーケティングなどあらゆる部署の担当者が参加し、食品表示に関する知識の取得と理解に力を入れている。部門横断の勉強会を行うことで、営業の取引先とのやり取りの場面や広報の広告作成等において間違った表現をしたり、誤解を与えることがないよう努めている。