受賞者一覧
令和6年度/第46回受賞者
食品流通部門[個人](2024)
農林水産大臣賞
早山 豊
所属:株式会社大作早山商店(代表取締役)
所在地:東京都江東区
業種:水産物仲卸売業
【功績申請の概要】
- 〇世界最大級の水産卸売市場が迎えた世紀の大移動事業に際し、その中の最大の業界団体である水産仲卸組合の代表として、数々の困難、試練を乗り越えて平成30年10月、豊洲市場の移転開場を成し遂げた。 〇母体の組合が移転をめぐって揺れ動いている時期に重なるように卸売市場法の改正論議があり、多忙な中にあって全国団体の長としてその対応にも追われ、各方面に働きかけて、一時は撤廃まで検討された卸売市場法を存続へと導き、仲卸業者の役割や地位が確保された功績は高く評価される。 〇平成2年6月に改正卸売市場法は施行されたが、息つく暇もなく、拡大する新型コロナ感染症への対応に直面。豊洲市場では氏の舵取りにより組合員へのPCR検査、感染防止策の徹底などにより感染の拡大を防止し、市場の事業継続を達成。都民を中心に川下への水産物の安定供給を確保することに貢献した。 〇水産流通適正化法の法制化に当たっては、その検討段階から、水産流通適正化制度検討会議への役員派遣や流通現場の視察の機会の設定などを通じて協力。令和2年12月の法成立後は、2年後の施行に向けて、会員組合に対する独自の説明会を各地で実施したほか、水産庁からの依頼を受けて会員外への周知や輸出事業者向けの説明会を開催するなど、組織をあげて制度の円滑な導入・実施に協力した。 〇令和5年8月末にアルプス処理水の海洋放出が開始される直前には、おひざ元の豊洲において東日本大震災の被災地の復興支援の一環として「三陸常磐 夢市楽座」をオープン。初日のセレモニーでは、「どこの海域・エリアで獲れた水産物に対しても公平に公正な評価をする。風評被害等は介入させない」と表明。3県の漁業関係者からは風評を払拭し、消費拡大につながる取組として高く評価された。
●功績申請の具体的内容
(し界発展への寄与)
【東京魚市場卸協同組合(東卸組合)理事長として】
○築地市場から豊洲市場への移転に対する取組
築地市場から豊洲市場への移転推進派、反対派の対立により組合員の分断が危惧される中で理事長に就任。延期に伴う補償問題や風評被害にさらされるも、東京都をはじめ、関係各所と連絡を密にして協議を重ねるとともに、国、東京都の関係議員等に陳情。随時決定したことを丁寧に組合員に伝えるべく、平成29年に意見交換会(3日間・112事業者が参加)や総代説明会、平成30年には1月(3日間・325事業者)、7月(3日間・361事業者)に組合員説明会を開催。さらに市場内業者と協力し、1・5・9月と複数回にわたる豊洲市場 習熟会の機会を設け、延べ8,500人を超える関係者が参加するなど、スムーズな開場に寄与。
【業界卸売市場の国際化に向けた取組】
○世界的な水産物需要が増加の一途をたどる中、国際化プロジェクトチームの座長として、自社の長年にわたる輸出実績を生かし、更なる輸出手続の簡素化や効率化を研究。組合員の国際競争力の強化に寄与。
【(株)大作早山商店の役職員として】
○東北地方日本海側のマグロ市場の開拓
かつては東北地方の日本海側には、マグロを食す習慣が浸透しておらず、仙台の卸売市場から少量入る程度でほぼ流通していなかったが、氏の人脈を生かし、酒田、秋田、青森などを拠点にマグロの販売ルートを開拓、東北地方日本海側にマグロの食習慣を拡大させることに貢献。
【東京魚市場卸協同組合理事長として】
○令和元年(3日間)を皮切りにコロナによる2年間の中断をはさんで、4年(5日間)、5年(7日間)、6年(10日間の予定)と毎年、江東区民を対象に豊洲市場の水産仲卸売場を体験する会を開催。「水産仲卸売場の概況」「安全管理及び衛生面の取組」「江東区内の鮮魚店」の説明も盛り込むなど、消費者が卸売市場の機能と役割を体感するイベントとして好評を得ている。
○令和5年7月から翌年の2月にかけて、東日本大震災の被災地の復興支援の一環として、岩手県、宮城県、福島県並びに東京都と連携して、豊洲市場において、良質なブランド漁場「三陸常磐物」の魚介類、特産品が購入出来る店舗と3県の情報などを楽しく学べるブースからなる「三陸常磐 夢市楽座」をオープン。
令和6年7月からは、連携先に能登半島地震の被害があった石川県を加えて復興支援活動の第2弾として夢市楽座を実施中。
【一般社団法人 責任あるまぐろ漁業推進機構の役員として】
○科学的根拠に基づく持続的なまぐろ類の資源管理を推進するための取組を実施している「責任あるまぐろ漁業推進機構(OPRT)」の理事の活動を通じて、世界の大型まぐろはえなわ漁船の隻数の抑制、責任ある漁業で漁獲されたマグロの利用の促進などに貢献。
(業界(団体)や社会への貢献)
【全国水産物卸組合連合会会長として】
○卸売市場法改正にあたっての貢献
卸売市場法改正に向けた検討過程で、全水卸組連を代表して卸売市場法の改正にあたっての水産仲卸業者としての意見を述べ、一時は撤廃案まで浮上した卸売市場法は抜本的に見直し存続することとなり、全国の卸売市場の仲卸業者の重要な役割や地位が確保された。
○水産流通適正化法の導入・実施に対する貢献
国内において違法に採捕された水産物(アワビ、ナマコ)の流通を防止するために、令和2年に水産流通適正化法が成立。その法制化に向けた検討段階から水産流通適正化制度検討会議に連合会の役員を委員として参画させ、水産庁の担当官には卸売市場視察の機会を設けるなど、水産仲卸の現場の実情、対象水産物の流通の特性が制度に反映されるように尽力。