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受賞者一覧

令和6年度/第46回受賞者

食品産業部門<経営革新タイプ>(2024)
農林水産省大臣官房長賞

株式会社新進

代表取締役:籠島正雄
所在地:東京都千代田区
業種:漬物、調味料、小麦でん粉、小麦たん白食品、ポテト等チルド製品および各種食料品の製造販売

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【功績申請の概要】

  • ○スパウト付き大根おろしの開発
    消費者のライフスタイルが変化する中、時間や手間は省きつつ、おいしく見映えのよい料理を作りたいというニーズは拡大し続けている。当社はそのような消費者の声に応え、おいしさ・安全性も十分に配慮した簡便性の高いスパウト付き大根おろしを開発した。
    これまで市場に流通していたチルド温度帯の大根おろしは、色や食感といった品質保持が難しく、賞味期限は一週間未満のプラスチックカップ製品が主流であった。また、フリーズドライ品や冷凍品は比較的長期の賞味期限が設定されているが、加工時に生鮮の大根おろし特有の食感やみずみずしさが失われてしまう上、使用前に水戻しや解凍の手間がかかる。
    当社は漬物・野菜ペースト・でん粉・調味料などの分野で培ってきた野菜の加工技術を応用し、生大根特有の色調や食感、みずみずしさを保持しつつ、簡便性の高いスパウト付きパウチに充填した商品の開発を可能にした。「おろしたての大根のような品質を保持しながら賞味期限60 日を有し、使いたい時に使いたい分だけ使える大根おろし」という他にない先駆的な商品は、新たな市場を生み出しただけでなく、大根おろしと親和性の高い蕎麦や焼き魚との関連販売によって、和日配・鮮魚を中心に売場の活性化にも貢献する商品となった。
    大根の他にも、刻み生姜やとろろ芋をスパウト付きパウチに充填した商品も発売。「手間いらずシリーズ」として、現在も市場を拡大している。その上で、継続した品質改良に取り組むことで、他メーカーから類似品が発売された後も消費者からの圧倒的支持を得ている。

●功績申請の具体的内容

(開発した技術の高度性について)

○白色の保持:大根は切断後、時間の経過とともに白色から黄色に変色していく。最適な厚みとバリア性をもつ包材を選定することで、おろしたての新鮮な白色の保持が可能となった。

○食感やみずみずしさの再現:大根おろし特有の繊維質を残すため、製造工場に専用のおろし金円盤を導入。原料の生大根は製造工場のある群馬県のサプライヤーから購入し、おろしてから24時間以内に包装することでおろしたての食感が再現可能となった。また、容器内で分離が起こらない水分と繊維質の配合を独自に設定し、製造ごとに調整を行なうことでみずみずしさを再現した。

○チルド温度帯で賞味期限60 日の品質保持:食品素材によるpH 調整、適切な殺菌方法の確立により、流通で扱いやすく、かつ消費者の安心感を損なわないチルド温度帯・賞味期限60 日での流通を可能とした。

(開発した製品の独創性について)

○利便性を高めるスパウト付きパウチへの充填:すりおろした状態の大根をスパウト付きパウチに充填することで、使いたい時に冷蔵庫から取り出し、手で容器を押すだけで使いたい分の大根おろしを盛り付けることが可能である。また、使用後に余った場合も、キャップを締めるだけで冷蔵庫内に省スペースで保管できる。

○大根本来の色や食感にこだわった商品設計:しょうゆ等の調味料で味付けをせず、大根のもつ色や食感を残すことで、様々な料理や食シーンで利用できる汎用性を有している。また、中身の白色が見える商品パッケージや、チルド温度帯での流通とすることで、大根おろしの食感やみずみずしさにこだわった商品であることを訴求し、常温や冷凍など他の温度帯で流通する他社製品との差別化に成功している。

(開発した技術・新製品の普及度について)

○「第36 回食品ヒット大賞」(日本食糧新聞社主催(2018 年))にて「食品業界の新しい商材として業界に活発な需要を生み出し、その商品を取り扱う流通部門を潤すとともに市場を活性化した商品」が受賞対象となる「優秀ヒット賞」を受賞。

○量目を増やした業務用タイプやもみじおろしの他、大根以外ではとろろ芋、刻み生姜をスパウト付きパウチに充填した商品も開発、販売している。これらを「手間いらずシリーズ」として商品展開することで、和日配以外の売場や外食産業にも市場を拡大している。

(開発した技術・新製品の社会(地域)への貢献について)

○食品ロスの軽減:国内で発生する食品ロスは2021 年で523 万トン、そのうち244 万トンは賞味期限内に食べきれない等の理由で家庭から発生している。大根おろしのように添え物や薬味として使用される機会の多い食材は、調理のつど適量を購入するのが難しく、家庭で発生する食品ロスの要因となりやすい。その点において、スパウト付き大根おろしは未開封で賞味期限が60日あり、食べたい分だけ使用し余った分を容易に保存できることから、家庭での食品ロス軽減につながっている。

○和食の文化継承への貢献:日本人の伝統的な食文化である「和食」は、2013 年にユネスコ無形文化遺産に登録された。当社は和食と関わりの深い漬物を製造・販売しているが、大根おろしもまた、和食には欠かせない食材のひとつである。手間のかかる大根おろしを手軽に使用できるようにすることで、消費者が家庭で和食メニューを選択する一助となっている。また、関連販売によって和食に関わりの深い麺(そば、うどん)や鮮魚(焼き魚、天ぷら等)の売場活性化につながり、ひいては和食文化の継承にも貢献している。

○国産大根のサプライチェーンの確立:大根おろしに使用する生大根はすべて国内産であり、またその半分以上は群馬県内産の大根を使用している(2023 年度)。商品の製造においては群馬県の加工事業者と連携し、原料の調達から加工、生産、流通、販売に至るまでのサプライチェーンを確立することで、年間を通して安定した国産大根の使用と需要に即した柔軟な供給体制を実現している。

○規格外野菜の有効活用:大根おろしの原料として使用する国産大根は、主に青果用として出荷できない規格外品を使用している。国内で生産された野菜を有効活用する事で、SDGs の観点からも課題となっている「作る責任 つかう責任」を事業として遂行し、持続可能な生産と消費の仕組みづくりに貢献している。