ページTop

受賞者一覧

平成29年度/第39回受賞者

食品産業部門<経営革新タイプ①>(2017)
農林水産省食料産業局長賞

東毛酪農業協同組合

代表理事:大久保 克美
所在地:群馬県 太田市
業種:牛乳加工業、酪農専門農協
> 公式ホームページ

イメージ

イメージ

【功績申請の概要】

  • 【経営近代化・合理化、生産性の改善向上等】
    牛乳本来の味を壊さないよう、食品の成分、風味、栄養、有用菌を極力損なわない低温殺菌による牛乳製造を、日本の牛乳業界の先駆けとして昭和57年から続けている。
  • この低温殺菌牛乳を地元の学校はもとより、東京都3市への学校給食用牛乳として提供しており、その数は1日当たり約9万本である。学校給食用牛乳を全て低温殺菌牛乳で供給することは全国的にも稀である。
  • 原乳の良さと低温殺菌技術を生かし、ナチュナルチーズを平成6年から製造販売している。
  • 商品ブランド力を高めるため、平成27年から大びん、小びん、500ml紙容器、1000ml紙容器すべてのパッケージデザインを刷新し、消費者認知度を高めた。
  • 牛乳まつりの開催、管内市町村の農業祭等への積極的な参加を通した地域交流の推進を通じて、酪農・牛乳生産への理解促進を図っているほか、小学校等の校外学習の場としても工場見学に積極的に協力しており、工場見学は年間25校以上となっている。

【功績申請の具体的内容】

【経営近代化・合理化、生産性の改善向上等】

  • 新たな事業活動の展開による経営の向上
    牛乳工場横にアンテナショップ「ミルクランド東毛」を設け、牛乳や乳製品、自給農場で採れたお米や農作物、「みんなの豆腐」「みんなの醤油」など組合が選んだ加工品やこだわり商品を販売している。東京の新宿南口の「ミルクランド東京」では乳製品はもちろん、自然食のランチが楽しめるようになっている。また、平成25年5月から東京ソラマチに「東毛酪農63℃」というアイスクリーム専門店を出店、平成29年4月からさいたま新都心コクーンに「東毛酪農63℃」店を出店し、より身近に、より気軽に東毛酪農の活動を届けられるようにしている。
  • 設備導入、工程見直し等による生産性の向上
    牛乳の低温殺菌方法には何通りかの方法があるが、当組合では、ルイ・パスツールが考案した、62℃~65℃で30分間加熱する方法を採用している。さらに同等の低温殺菌効果を維持しながら、生産効率を向上させるため、72℃~75℃で15秒間加熱する方式も開発した。

    平成22年には牛乳殺菌機の更新を行い、学校牛乳についてはこの75℃15秒間殺菌方式に変更した。また、平成25年に約2億円をかけてESL(Extended Shelf Life:賞味期限の延長)仕様の牛乳充填機に更新した。製造は充填工程全体を防塵機能を備えた空間で行っており、容器成形不良の減少、二次汚染リスクが減少するなど、製品の品質向上につなげている。

    こうして品質管理体制は強化されたものの、当組合の生産規模から設備の更新による生産効率は、従前と同程度である。

    なお「牛乳は生ものなので早く飲んで欲しい」との思いから、新型充填機導入による消費期限の延長はしていない。
  • 新製品開発による市場開発
    群馬県内でのナチュラルチーズ製造はほんの僅かであるが、原乳の良さと低温殺菌技術を生かし、20年以上前からカマンベールチーズ製造を手掛け、順調に販売数量を伸ばしている。これに加えて、10年前よりエダム系チーズの開発も行い、販売実績を積み上げている。
  • 販売促進
    常に消費者との2人3脚を意識し、「みんなの牛乳勉強会」による生産者・消費者が一体となった乳製品研究、商品開発を行い、消費者へ搾りたての牛乳の味を直接届けることを基本としている。

    また、ゴミ減量を目的として、容器にびんを採用している。低温殺菌牛乳におけるびん容器の割合は44パーセントを超えている。びん容器についてはリターナブルびんとし、日々回収をしている。これらを実現するために、消費者グループへの宅配を基本とした販売や生協を通じた共同販売方式を採用している。
  • 従業員の資質の向上のための取組み
    牛乳工場は、小学校等の校外学習の場として協力しており、常に公開しても恥ずかしくないよう徹底した5S活動を中心に環境整備と経営合理化を推進している。また、HACCP認証を取得するための職員教育をはじめ、HACCPに準じた記録管理を実施している。
  • 独自の製造方法及び技術研究開発の推進・充実
    前述したように、低温殺菌方法には何通りかの方法があるが、当組合では日本の法律で許されている最も低い温度の20分かけて63℃まで温めた後、63℃30分間殺菌法を採用している。牛乳の殺菌方法の主流を占めているUHT殺菌法は、温度を120℃・2秒という極限温度をかけるため、風味・食味が悪くなってしまうが、低温殺菌法では温度が63℃30分間であるため、牛乳本来の旨みのある製品づくりが可能となる。しかし工場での実生産という観点では、バッチ方式のために不向きであった。この課題を解決するために、殺菌パスチャライザー、送乳ポンプの改良を繰り返し、量産可能な連続式低温殺菌牛乳プラントを完成させた。

    低温殺菌牛乳の製造には、原材料である生乳の鮮度および品質の維持が重要である。これには従業員の意識向上が欠かせないため、ヘルパー制度推進による後継者対策や「利根川河川敷の野草利用と清掃」による良質牛乳確保のための生産活動等を通じて組合員自ら食への関心の向上を図り、高い志を持ち、毎日の徹底した牧場での衛生管理、牛たちにストレスを与えない健康管理、工場内での集乳から発送に至るまでの細菌数のチェック等を徹底している。このように毎日のたゆまない衛生管理を行うことが、生産者・組合・消費者のつながりを大切にした三位一体の生産活動につながっている。
  • その他の経営改善措置等
    中身の良さだけでなく、東毛酪農の乳製品のブランド力を高め、消費者にアピールするため、平成27年から大びん、小びん、500ml紙容器、1000ml紙容器すべてのデザインを見直した。統一感のとれたデザイン、2色からフルカラーに切り替え、牛乳を殺菌する時の温度の「63℃」を商品名にして大きくあしらい、水色と黒の文字に刷新するなどの変更をおこなった。

    また、生クリームが浮くという特徴を前面に強調し、低温殺菌や牛乳づくりのこだわりなど消費者に伝えたい情報を多く載せたところ、「殺菌温度を商品名に取り入れたことが斬新である」、「美味しさとさわやかな印象を与える」等と好評を博している。

【原料原産地表示の取組】

  • 組合員が生産する生乳だけでは不足する場合は、群馬県内の他の生産地より移入している。したがって生乳の原料原産地は全て群馬県内産である。