受賞者一覧
令和4年度/第44回受賞者
環境部門<食品リサイクル推進タイプ>(2022)
農林水産省大臣官房長賞
株式会社みまつ食品
代表取締役社長:神山 光永
所在地:群馬県前橋市
業種:中華点心類(餃子、焼売等)の製造販売
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【功績申請の概要】
- 当社内では「環境と経済性」を考えた次の2つの取組を実施している。1つ目は、フードバンクなどへの寄贈事業である。当社では、どうしてもお客様からの注文どおりの数量をピッタリ製造出来ないため、製品製造時に受注した数量より少しだけ多く製造を行っている。業界の構造上、欠品は出来ないため、欠品防止の観点からも受注数量より少しだけ多く製造を行っている。この少しだけ多く製造した商品を当社では余剰品と呼んでいる。余剰品は当社従業員向けに社内販売を実施していたが、ここ数年受注数量が増加した事により余剰品の数量も増加した。以前は社内販売で対応できていたが、徐々に処理できずに廃棄になってしまうことが出てきた。せっかく製造してくれた当社従業員や、仕入先の原料メーカー様に申し訳ない思いを感じていた。この余剰品に対していい方法はないかと模索していたところ、群馬県社会福祉協議会からフードバンクや子ども食堂を紹介していただき、フードバンクや子ども食堂に対して、まだ食べられるが処分されてしまう余剰品の寄贈がスタートした。現在では専属の配送員を社内に設け、自社の余剰品のみならず、当社の協力メーカーや、地域の食品企業、地域の住民の皆様から、まだ食べられるが捨ててしまう商品を受け付け、当社がハブとなり群馬県内のフードバンク、子ども食堂などの福祉施設に対して寄贈品の配送を行っている。以前は年間廃棄量推定18トンが出ていたが、現在ではアンテナショップでの再販とフードバンク、子ども食堂などへの寄贈で廃棄量12トンの削減に成功した。
- 2つ目は、キャベツのバイオリファイナリー事業である。当社は創業以来中華一筋半世紀、事業を継続しており、その中で一番の生産品目は「餃子」である。餃子を製造する上で欠かせない原料は「キャベツ」で、当社では1日平均6トンを使用している。そのため、市場からは買い付けず、農家と直接契約を結び、当社専属の組合を設立して頂き、納品してもらっている。その関係上、農家とは密接な関係を構築している。キャベツには食用に適さない部位があり、外葉や芯は固く餃子に入ると食感を損ねてしまうため、当社では廃棄にしていた。廃棄量は1日100kg以上にも及んだ。先述の農家との関係から、これだけのキャベツ廃棄量を出してしまっていることに対して大変申し訳無い気持ちを常に感じていた。そこで、キャベツの非可食部の有効活用を行うためのプロジェクト「キャベツプロジェクト」を自社で立ち上げた。このプロジェクトは社内ベンチャー制度として運用され、キャベツの非可食部の有効活用を目的としているが、同時に若手社員の育成も目的としており、キャベツの非可食部の再利用、企画、製造、販売を一貫して行うことにより次世代の経営幹部候補の育成も担っている。現在では、キャベツの芯から抽出したエキスを利用した「キャベツサイダー」とキャベツの芯を具材に練り込んだソーセージ風の「シャキッとギョーザ燻」の2種類を販売している。また、日本カーリット㈱からの技術支援を受け、キャベツの芯からGABAなどの有効成分を抽出する技術を開発した。現在は、抽出したキャベツパウダーのGABAを有効活用し、サプリメントやプロテインの開発を行っている。
(資源・環境保全対策)
(食品リサイクルの推進)
〇食品廃棄物の発生抑制の取組
当社は、主に食品量販店、外食産業向けに商品供給を実施している。商品は受注後に製造し納品するという流れを取っている。この流れにおいて、受注数量は必ず納品しなくてはならず、欠品を極力避けることが求められる。そのため、保険をかけて製造時は受注数量より少しだけ多く製造を実施する。受注よりも少しだけ多く製造した商品は余剰品と呼ばれている。当初この余剰品は社内販売を実施していた。近年、受注数量の増加に伴い余剰品の量も大幅に増加してきた。社内販売では対応しきれずに廃棄を実施していた。この余剰品をどうにか出来ないかと模索していたところ、群馬県社会福祉協議会からフードバンクや子ども食堂を紹介して頂き、余剰品を寄贈する事業がスタートした。現在では、専属の配送員を設け、群馬県内の施設に配送を実施している。また、当社協力企業や近隣の食品メーカー、近隣の住民にも声をかけ、「まだ食べられるけど捨ててしまう」商品を当社へ集約し、その後当社配送便で配達を行う取組も実施している。以前は年間廃棄量推定18トン出ていたが、現在ではアンテナショップでの再販とフードバンク、子ども食堂などへの寄贈で廃棄量を12トン削減することに成功した。
〇再生利用等の取組
当社で一番使用する食品原料は「キャベツ」である。キャベツは大きく分けると可食部と非可食部に分かれ、非可食部とは、硬く食感を損ねてしまうキャベツの芯や外葉の部位を指す。この芯や外葉を餃子の具として使用すると筋や繊維のような食感が餃子に加わり、食感を損ねてしまう可能性がある。当初、当社ではこの芯や外葉を平均して一日100kgほど廃棄していた。この廃棄をどうにかしたいと考え「キャベツプロジェクト」を始動させた。キャベツプロジェクトは、廃棄をなくしキャベツの非可食部に新たなる付加価値を付け、再度商品としての価値を見出すことを目標に当社若手社員を中心に活動している。商品化の第一弾としてキャベツの芯から抽出されるエキスを利用してキャベツサイダーを開発した。その後も、ゼリーやソーセージ風食品の開発を手掛けた。また、近年、日本カーリット㈱から技術支援を受け、キャベツの非可食部をパウダー化することに成功した。このパウダーにはGABAが多く含まれ、血圧を下げる効果や睡眠の質を向上する効果が見込まれることから、サプリメント等の健康補助食品にも応用出来ると考えている。廃棄予定の非可食部から付加価値の高い原料を抽出する「バイオリファイナリー技術」を使用して現在も様々な商品開発に取り組んでいる。
〇食品関連事業者・リサイクル業者・農業者・消費者等との連携
当社では、創業以来一貫して餃子の製造を行っている。餃子で一番使用する原料のキャベツは、市場からの通常流通ではなく、地元の農家と一貫して直接取引を行ってきた。群馬県伊勢崎市にある向原地域のキャベツ農家に当社専属のキャベツ組合を設立して頂き、毎日新鮮なキャベツを当社に納品してもらっている。直接取引の為、少し傷が付いたり形が歪で市場流通に適さないキャベツでも、当社では全量買取を実施することにより、食品ロスの削減に繋がり、なおかつコストダウンにもつながるため、当社の競争力の源泉になっている。
(環境問題への社内体制等)
〇環境対策の社内組織の状況等
当社は実質100%再生可能エネルギー由来の電力を使用している。また、当社の屋根には1,100枚のソーラーパネルが設置されており、年間使用電力の10%を補うソーラー発電により温室効果ガス削減への取組を実施している。
〇消費者への情報提供等の啓発活動の取組
当社のSDGs活動の取組をホームページで公開している。また、「地球と環境のことを考えて作った大豆の餃子」という商品を販売し、畜肉生産時の温室効果ガス削減や、バイオリファイナリー技術の活用や循環型リサイクルトレーを取り入れた商品を販売することにより消費者の啓発を促している。
〇環境行政に対する対応・協力等
前述の取組を評価いただき、現在では、群馬県や近隣大学からの要請を受け、SDGsに関する公演や講義を実施している。特に当社で実施している貧困・環境対策が企業の収益性の向上につながるモデルケースとして扱われている。当社での成功例を近隣の企業と情報共有している。