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受賞者一覧

令和4年度/第44回受賞者

食品産業部門<経営革新タイプ>[個人](2022)
農林水産大臣賞

佐々木 康成

所属:タカラ食品工業株式会社(代表取締役社長)
所在地:東京都大田区
業種:食肉製品の製造・加工・販売業
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【功績申請の概要】

  • 品質競争」による商品ブランドの確立と加工食品(惣菜等)への展開により、食肉加工品の売上高は氏の入社後30年で約1.5倍の約30億円となり、経営基盤の確立と業績向上を実現した。
  • 権限委譲による事業部制導入や時代のニーズに合わせた商品を的確に提供するための経営改革を実行し、売上高は約100億円(令和3年度)に拡大し、経営のしなやかさと強靭性が確立された。
  • 先進的なクックチル方式(工場で加熱・調理した製品を急速冷凍し、販売時に再加熱処理)の導入による売上向上を実現し、現在では他社95社が利用する品質保証業務支援システム(TakaraNEQST)を独自開発した。
  • 駅ナカ「デリショップ」への出店の制約を克服して商圏の拡大を図り、経営基盤を強化した。

(経営近代化・合理化、生産性の改善向上等)

○新たな事業活動の展開による経営の向上

①「品質競争」ができるブランド確立と加工食品(惣菜等)への展開による経営基盤の確立

 氏は、自社製品をブランディングし、企画・製造・販売の社内体制を構築し、デパ地下に旗艦店の「ブッツデリカテッセン」(食肉加工品)と「ニューヨークデリ」(惣菜)を出店した。 高級スーパーの惣菜部門の受託運営開始と、コンビニでの高品質志向を予想して1,500店規模のオーダー処理可能な「受発注~製造~物流」システムを新規構築した。商品開発では、食肉加工品の高品質化とブランディングを図り、高級ミートデリカテッセンを生み出し、惣菜・サンドイッチ事業では競合他社との差別化商品が完成した。食肉加工品の売上は氏の入社後30年で約1.5倍の30億円となり、経営基盤の安定と成長に尽力した。

②事業部制導入による経営のしなやかさと強靭性を確立

 氏は代表取締役社長に就任後、時代のニーズに柔軟に対応するため、権限の大半を事業部に移譲し、機能別組織を事業部制組織に移行して売上高を伸ばし、経営のしなやかさと強靭性が確立した。

○設備導入、工程見直し等による生産性の向上

①先進的なクックチル方式導入による品質及び衛生管理の向上

 平成7年、業界内では見られなかったクックチル方式(工場で加熱調理・急速冷却し、販売時に店で再加熱調理)を他社に先駆けて導入した。設備投資のハードルが高かったが、同方式は高度な衛生管理が可能で導入価値ありと決断した。導入後、サンドイッチを除く惣菜製品は同社売上げの3割超に成長した。

②独自開発した品質保証業務支援システムの導入と同業他社への提供

 平成20年に市原工場、平成22年に葛西フレッシュセンターがISO22000を取得した。さらに、製造工場から管理、販売、店舗などをつなぐ品質保証ノウハウを品質保証業務支援システム(TakaraNEQST)として独自開発。その実用性が評価され、現在食品企業95社が導入している。

③LAN導入等による生産・物流システムの高度化

 氏は、製造工場から販売、直営店までをLANで結び、売上情報の確認、販売・生産部門間相互の適確かつ柔軟な対応が可能となり、生産・物流システムの高度化につながった。

○市場開拓、販売拡大の取組

①駅ナカ「デリショップ」の展開による商圏拡大と経営基盤の強化

 氏は消費者のコンビニへの購買傾向を見て、手軽に毎日利用する場所として「駅ナカ」に注目。駅の店舗は公共機関との性質から制約があったが、駅近くにバックキッチンを設置し、商品を適時提供する体制を構築。現在、東京、千葉、神奈川に計4駅を出店し、同社の商圏拡大と業績向上に大きく寄与している。

②当社旗艦店「メッツゲライ・ササキ」の設置(メッツゲライ:ドイツ語で食肉加工品の意)

 更なるブランド力向上のため、平成25年、田園調布駅前に旗艦店「メッツゲライ・ササキ」をオープン。ドイツ国家資格「ゲゼレ(食肉加工職人)」取得の職人が作る厳選した食肉加工品を販売し、その品質と商品の信頼性の高さから着実に売上げが増加している。

○独自の製造方法及び技術研究開発の推進・充実

①自社製品の更なる品質の向上とお客様の信頼性確保のため、平成14年のドイツ食肉加工国際コンテストへの出展を皮切りに、これまでに金メダル33品、銀10品、銅3品を受賞。平成17年の愛 知万博ではドイツパビリオンのレストランメニューに同社製品が採用された。

②「パテ・クルート世界選手権2021」(フランス)にエントリーし、同社から派遣された福田氏は見事に優勝し、日本人として二人目の快挙を成し遂げた。

○労働環境改善、福利厚生では、ワーク・ライフ・バランス制度を導入し、子育てや介護のためのフレキシブルな勤務体制の導入や有給休暇  の取得推進など、労働環境の改善に努めている。また、社員旅行や全パート社員との食事会など、「チーム・タカラ」としての組織力向上に貢献している。

○従業員の資質の向上のため、従業員をドイツに3年間派遣し、ドイツ国家資格「ゲゼレ(食肉加工職人)」取得を支援。これまで3名が資格を取得し、現場で技術指導を行っている。また、継続的な品質管理等講習会の実施している。

(外部との連携)

○氏は、当社と小売がチームとなって商品開発等を行うチームマーチャンダイジングによる販売で、顧客ニーズ・店頭販売の情報が的確に把握でき、生産や出荷の柔軟な対応ができるようになった。

○近年DX化の取組が注目される中、氏は、業務全般のDX化を進めるとして、適確なシステム化による生産性の向上や業務の効率化、ウエブマーケティングによるオンラインショップ販売の最適化を図っている。

○当社では、製品の品質管理や衛生管理の内部監査に加え、外部機関による第三者監査を定期的に実施し、更なる品質管理・衛生管理の向上を図っている。

(業界(団体)や社会への貢献)

○団体組織の充実・強化への取組

氏は日本ハム・ソーセージ工業協同組合の理事として業界の諸課題に積極的に関与し、関東支部長として本部役員会の報告・決議事項等を支部組合員に提供し、公平・公正な運営に努めるとともに、消費税率の引上げやインボイス制度導入の普及啓発に努めている。平成30年からハム・ソーセージ類公正取引協議会の理事を務め、表示検討委員会の副委員長として関係機関からの情報入手と支部組合員への情報提供に努めた。

○環境対策への取組に対する指導的役割

同組合はCO2削減等の環境対策への取組として「食肉加工業界の環境自主行動計画」を平成27年に策定し、取組状況を農林水産省に毎年報告している。氏は環境委員会副委員長として、計画の策定・実行に献身的に関与し、本年春以降のソーセージ商品のピロー型包装への変更による包装材の削減にも積極的に対応した