受賞者一覧
令和3年度/第43回受賞者
【功績申請の概要】
- こんにゃく芋から全ての工程を手作業で「生芋こんにゃく」を製造する技術(先代から伝授されたこんにゃくを練る技術『波返し』)の伝承者で、凝固剤にホタテの貝殻焼成カルシウムを使用し、日本古来のこんにゃくを再現して販売している。必要最小限のカルシウム使用で製造するため、アク抜きが不要となる。
- 貝殻カルシウムの使用で、袋に入れる保存水(凝固剤を溶かした水)はph14以上で透明なものを作る技術を有し、商品の価値を下げずに賞味期限を安定させることに成功した。
- こんにゃく芋のグルコマンナンを結着剤として食材を固める特許2件を取得した。
- こんにゃく芋100%で白滝こんにゃくを造る技術は全国でも唯一無二であり、さらには、羽釜を使い直火炊 きで天草(海藻)からところてんを製造する伝統技術も有している。
(経歴、人格、識見)
〇幼少期より家業に従事し、祖母の手作業を見ながら育った生粋のこんにゃく職人であり、一意専心でこんにゃく製造に従事し、美味しいこんにゃくを造るため、手造りのこんにゃくにこだわる。20代で専業となるが、シーズネットワーク(異業種交流会)に参加し、素材の扱いを学び特許を2件取得した。
〇新製品「大豆&黒ごま入りこんにゃく」を開発する一方、こんにゃく芋100%のこんにゃくは手作業でしか製造出来ないことにこだわり、生芋100%の白滝こんにゃくの製品化に成功した。また、直火炊きで天草を煮出して逸品のところてんを炊く職人でもある。
(業界における指導力、人望)
〇愛知県こんにゃく組合が解散し、尾北こんにゃく組合は消滅。同業者からの問合せ対応のみ。
(専門性)
〇こんにゃくを練ると言う。先代より受け継ぐ「練り鉢」は今もあるが、現在はステンレス製のボウルで練っている。左右の手のひらを交互に押し込み素早く回転させる技術『波返し』は先代より伝授された。こんにゃく芋に含まれるグルコマンナン(コンニャクの素材)の量は、芋の大小に関係なく同じ量とされ、違いは発育状態と吸水量、そして芋に含まれる澱粉の量である。同じ芋はひとつもなく、加水量、吸水時間、練る時間、凝固剤の量も毎回芋の状態を見ながら変えていくので、機械装置での製造はできない。製造品目に合わせて芋を選別して使用するので、品種ごとに大きさ、質量、色、乾燥状態で3種類に分類することも代々伝授されるこんにゃく職人に必要な技術である。
〇生芋100%の糸こんにゃく(白滝)製造技術は全国でも唯一無二と言われ、凝固剤投入後の反応状態を見ながらプレス機に掛ける。製造日の気温、水温、芋の温度、凝固剤の分量どれひとつ違っても糸状にならない。判断は職人の経験だけだからである。
〇日本に千年以上続く食材こんにゃくと機械製造のこんにゃくは別物で、千年前は竃の灰を使いこんにゃくを固めていたが、当時の製品を再現する為に貝殻カルシウムを使用し、必要最小限の使用に抑えることで当時の食感を再現した。加えて、貝殻カルシウムを微粉末に再加工することで、使用量が少なくとも反応させることができ、袋に入れる保存水(凝固剤を溶かした水)もph14以上(通常水道水はph7。機械製造製品はビニール袋に材料と凝固剤を入れ、温水の中を巡回させてビニール袋内で固めるので、パック水は不使用)で、透明(通常は白濁)で商品の価値を下げずに賞味期限を安定させることに成功した。竃の灰を使ってカルシウム水を作るとph10以上には上がらないが、灰を炭化させることでph14以上の数値を出す技術を有する。
〇羽釜を使い、直火炊きで天草(海藻)から「ところてん」を炊く技術も有しており、ところてんに添付する三杯酢スープを炊く技術も持っている。
(技術・技能の評価)
〇技術・技能の客観的評価
・特許第4252146号 凝固状健康食品 発明者 倉地秀幸 平成21年1月30日
・特許第4545841号 凝固状多孔質健康食品 発明者 倉地秀幸 平成22年7月9日
・愛知県優秀技能表彰受賞 『あいちの名工』 平成26年11月7日
・犬山がんばる企業アワード 最高位 犬山市長賞 受賞 2018年10月14日
・モンドセレクションブロンズアワード受賞 ベルギー政府 2019年4月5日
〇保有技術・昨日の希少性
・芋の見極め、練る技術は親から子に、師匠から弟子に伝授され、技術を修得し人格と共に認められると暖簾分けとして店を出して広がっていった。機械化によりボタンを押すとこんにゃくが出来る現在、製造を指導するのは機械メーカーの営業者で、技術は必要ない。こんにゃく屋が無くなり技術も無くなり、手造りこんにゃくの最後の職人と呼ばれている。「食の3重丸」協会(㈶雑賀技術研究所主催で安心安全・美味しいを基準に審査)より全国で唯一こんにゃく芋100%のこんにゃく製品と認定・表彰された。
・天草(海藻)を煮出して固めたものがところてんで、それを乾燥させたものが寒天である。一般に流通するところてんは粉末寒天を使用し、再度ところてんの形に製造したもの(もしくは圧力釜使用)で、昔ながらの羽釜を使い、直火炊きで天草を煮出す技術は、他に誰もまね出来ない伝統技術である。
(公開・普及状況)
〇犬山市特産品協会主催による体験学習事業で、手造りこんにゃく製造体験学習の講師を務めている。
〇市内及び隣接する小中学校の見学体験学習事業の受入れを毎年実施している。
〇(一財)雑賀技術研究所主催の伝統製法を守る蔵元見学バスツアーを受け入れている。
〇個人、婦人会等の指導要請に応じて技術指導をしている。
(し界の発展への寄与)
〇し界への貢献
・NHK番組内(おはよう日本)でところてんの文化を紹介した。また、TV番組、ラジオ、新聞雑誌等でこんにゃく、ところてんの歴史、文化を紹介し、製造工程を公開してきた。
・TV局プロデューサーより、こんにゃくの歴史、製法、時代考証の質問等に回答している。
・先代より引き継ぐ木桶、丁場の仕切り、天秤秤等を民族資料館に寄贈した。
〇業界や地域との広域的活動
・犬山市特産品協会役員(幹事)として、愛知県、市町村、商業施設主催イベントに犬山市特産品として出品し、販売活動を実施している。また、犬山市朝市組合役員として創設より参加し、隣接する丹羽郡大口町朝市会をTV番組で紹介し、大口町町長より感謝状を授与された。
・直火炊き製法で火を扱う者として、秋葉山神社犬山支社青年団「玉光会」会長としての活動実績があり、また、犬山市消防団員として8年間在籍し活動した。
・こんにゃくはこんにゃく芋からできると知ってもらうきっかけ作りのために店頭で鉢植したところ、大きな花を咲かせたことが話題となり、新聞等で紹介された。
(技術・技能の社会への寄与)
〇凝固状健康食品の発明特許は、国際生化学分子生物学連合総裁で㈶応用生化学科研究所長の八木國夫氏の指導の下、少食の高齢者に効率良く栄養補給をしてもらうための発明特許である。
〇椎茸等菌を保有する食材を練り込み(ph14のアルカリ水に浸し滅菌)、岐阜県藤橋村の特産品として商品化に成功している。
〇通年で販売するところてんは、無添加の食材として食事制限された高齢者やその家族から感謝の声が届く逸品であり、日本古来の食品として本物の味を守り伝える事が出来るのは直火炊き製法のみである。