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受賞者一覧

令和2年度/第42回受賞者

食品産業部門 <経営革新タイプ①>(2020)
農林水産大臣賞

北日本フード株式会社

代表取締役社長 酒井 信男
所在地:北海道札幌市
業種:漬物・惣菜類の加工食品卸売
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【功績申請の概要】

  • 国産野菜使用を原則として漬物の製造販売を営んでいる。北海道企業として、道内の野菜生産者に他産地(長野県・茨城県)の生産に関する最先端技術を習得させ、栽培技術を向上させることにより、道産野菜の活用拡大及び野菜生産者との連携強化を実施し、商品開発及び漬物製造販売を強化している。
  • 主原料野菜は地域道産をメインとし、漬物製品の企画・販売、健康志向の高まりから乳酸発酵を生かした漬物製品など付加価値を求めた商品の開発を進めている。
  • グループ会社である製造会社等の設立により雇用の維持・拡大に努力している。
  • 中小企業ながらもSGDsの取組みを進め、環境経営を企業風土としていくため、積極的に社員を研修に参加させ、社員個人の働きがいや意欲向上にも役立てている。

(経営近代化・合理化、生産性の改善向上等)

〇新たな事業活動の展開による経営の向上

北海道から発信された北日本フード㈱の「スーパー極上キムチ」が、北海道はもとより関東でも大手量販店を中心に大ヒットとなり、漬物メーカー、特に浅漬けメーカーに対してのインパクトは大きく、それ以降、「和風浅漬けキムチ」は「甘辛」が主流となり各メーカーの商品群は大きく方向性が変わると同時に、売り場面積の占有率の低かったキムチが、今では通常の漬物を超え、漬物≒キムチという図式が成り立っている。現在でもキムチが生産の中心であることには変わりがない生産体制の中でも、主原料野菜はもちろん地域道産原料をメインとした漬物製品の企画・販売、健康志向の高まりから乳酸発酵を生かした漬物製品など付加価値を求めた商品の開発を進めている。

主原料となる野菜については、過去には道庁との取り組みを通じて主力工場がある恵庭市内の農家と提携し、ヨーロッパ原産のコリンキー、ビーツ、フィノッキオなどの特殊野菜の商品化やコールラビの商品化などの実績を持つ。また、夕張農協からは夕張メロンの摘果品を購入し醤油漬け商品を開発。岩見沢からは希少作物の「黒サンゴ胡瓜」、同じく希少作物であり生産農家の永続化の観点から商品化したキャベツ「札幌大球」、札幌発祥で栽培が困難なことから年々減少している玉ねぎ「札幌黄」を使用したキムチの製造なども行っている。

商品の付加価値創造の視点からは、留萌の鮭から取れる鮭皮コラーゲンを入れたキムチ、道東標茶町からの鮭節と十勝川西産規格外の長芋を利用したコラボレーション商品も開発した。更に、大手コンビニチェーンのおでん加工向け道内産大根から発生する外皮部分を乾燥させた割干し大根を使用した総菜漬物を製造している。直近では、羽幌漁協とのコラボで特産の甘エビの殻を乾燥させたパウダーを使用した海老風味のキムチの製造・販売や、昨今の健康意識の高まりから、地独)北海道立総合研究機構(以下、道総研)食品加工研究センターが開発した乳酸菌「HOKKAIDO株」で漬込んだ「乳酸発酵キャベツ」の製造・販売を手掛けている。この菌の活用で、農産加工品の発酵迄の時間を従来と比べて数週間程度短縮する等による鮮度劣化を低減し、生産性の向上を図ることが出来た。この「植物性乳酸菌HOKKAIDO株を使用した農産加工品の開発・製造・及び販売」事業は、H29年6月9日付けで農商工等連携事業計画に認定された。

 

○設備導入、工程見直し等による生産性の向上

それまでの道内の多くの中小漬物メーカーは機械化が遅れていたが、2002年恵庭市に設置した当社主力工場では、前述のキムチの量産を目的に、従来は手作業で行われていた作業工程を完全オリジナルの生産工程に組み換え、キムチ・浅漬けの製造工程における効率面・衛生面のレベル向上を図る事が出来るようになったため、大手コンビニチェーンとの関係性や取引にもプラスに働いた。この様な積極的な設備投資は、後の道内における白菜切漬けによるO-157食中毒事件の際にも、道内浅漬けメーカーのスタンダードとして、いち早く信用回復に繋げることを可能にした。

 

○市場開拓の取り組み

当社の目指す地元密着型高付加価値商品の開発・販売は、これまで量販店向けが主ではあったが、ともすれば価格競争へと巻き込まれがちな昨今、これらへの対応から、通販も含めたオンリーワン製品販売も視野に入れた商品づくりへとシフトしつつある。製造・販売が一体となって企画に取り組むために、毎週月曜日に営業、各工場の責任者が集合し合同開発会議を開催している。近年、この活動の成果が見え始め、結果として「北のハイグレード食品(北海道主催)」、「北海道加工食品コンクール(一般社団法人北海道食品産業協議会主催)」等の受賞実績を挙げ、徐々に認知されつつある。近年は北海道への道外同業他社の進出も目立ってきており、価格がバイヤーによる選択の基準となりつつある中、より良い原材料とより良い品質の製品を製造・販売していくのが地元密着型の当社の使命と考え取り組んでいる。

 

〇独自の製造方法及び技術研究開発の推進

・独自商品の開発面

「乳酸発酵キャベツ」は道総研・食品加工研究センターの開発した乳酸菌「HOKKAIDO株」を使用し、特産である「札幌大球キャベツ」を、従来の浅漬けメーカーとしては踏襲しきれていない、熟成・発酵というジャンルの漬物に積極的に取り組んでいる。主力工場に品質管理室を設置して品質の維持・研究・開発を進めており、各工場にはベテランの工場長を配置し、工場運営に加え、長い経験を生かした商品開発・改良に取り組んでいる。

・衛生管理技術面

北日本フード㈱が発足した当時の道内浅漬けメーカー業界においては、原材料野菜の殺菌や工場全体の衛生管理という概念や手法が定着しておらず、小売店サイドでも浅漬けの膨張や濁りはつきものの一つとして捉えられ、余り大きな問題として考えられていない環境であった。2002年に設置した主力工場では、当時、首都圏を中心に急速な消費増大に対応するため、解決策の一つとして賞味期限の大幅な延長が求められ、この課題に対応するため、道総研・食品加工研究センターに日参し、野菜の殺菌についての技術的アドバイス「ホタテ貝殻・二段階殺菌法」などを受けた。結果として、単に原材料野菜をしっかり殺菌することだけでなく、そのあとの温度管理、時間管理、個人の衛生管理、設備の整備清掃、殺菌による総合的な衛生管理を確立することができ、その後の商品移出に際して強力な武器とすることが可能になった。

 

○従業員の資質の向上のための取組み

社員のレベルアップを図るために「食品表示検定」、「惣菜管理士」、「販売士」及び食関連の資格取得を営業部門、製造部門にかかわらず奨励し受験料の補助実施、昇給・昇格のベースとしている。従業員の資質向上を目指す観点から、主力工場は2008年にISO9001の認証取得しており2020年には北海道HACCPの認証を受ける予定。これら品質・衛生管理向上への取組みにより、従業員がPDCAの考え方にも慣れてきたため、さらにテーマを拡げ、SDGsをテーマとする研修会にも従業員を積極的に参加させている。今年度は「省エネ・食品ロス削減を担う人材育成研修会(一般社団法人北海道食品産業協議会 主催)」の基礎研究会並びに実践研究会に延べ9人を参加させ、従業員自らが課題を見つけ出し、改善改良のための方策についての情報を収集してエネルギー消費の見える化を進め、会社全体を巻き込んで改善計画を立案・実施できるよう取り組んでいる。。

 

○社外との連携による経営改善措置

・生産技術関連

道総研・食品加工研究センターと発酵技術の開発及び野菜殺菌の技術開発で協力関係を築き、当社を実験の場として活用していただいている。(公財)北海道科学技術総合振興センターとは、当財団が主催する食関連産業スマート化ネットワークにも参加し、新しい生産技術の取得・教育、情報取得の場面で大きな協力をいただいており、食品ロス削減の面でも、いろいろな利用に興味を示していただける企業の紹介を受け、テストの実施や教育支援等の御協力をいただいている。技術支援では、道総研・工業技術センターから設備アドバイスをいただき、当センターのセミナー・意見交換会にも出席させていただいている。公財)北海道中小企業総合支援センターにも経営・生産技術の場面でのアドバイザー的役割を担っていただいており「ものづくり補助金」のアドバイスも受けました。各企業の有益な情報や関連企業のご紹介を受ける等、製造部門を中心に有用な情報をいただいている。