受賞者一覧
令和6年度/第46回受賞者
食品産業部門<経営革新タイプ>[個人](2024)
農林水産省大臣官房長賞
栗原 守
所属:株式会社クリマ(代表取締役社長)
所在地:群馬県伊勢崎市
業種:食肉加工業、食肉卸売・小売業
【功績申請の概要】
- ○独自開発を25 年以上にわたり継続し、お客様にご愛顧される氷温熟成「氷室豚」を実用化した。「氷室豚」は、氷温域(0℃~-5℃)で普通豚肉を凍結直前条件で14日以上熟成させた製品である。熟成過程において、薬剤等の化学物質は一切使用していない。熟成を進めることで各種アミノ酸や脂肪酸の含有量を増加させることができる。これにより健康増進や健康寿命延伸に寄与する成分を効果的に摂取することができる。「氷室豚」を実用化するには、各種微生物等の制御や一般生菌数低減により腐敗や異臭等が発生しない高度な衛生管理技術と品質管理技術が絶対条件となる。 ○「氷室豚」の製品価値を広く知っていいただくために、消費者庁所管の機能性表示食品の届出を行った。 ○現在も安全安心をより高度に実現する衛生管理技術、品質管理技術を追求する研究開発や健康増進、健康美容に資する機能性成分の探求に向けて各種研究機関と連携研究を進めている。
●功績申請の具体的内容
(開発した技術の高度性)
○食肉の衛生管理技術
・車両懸垂搬入技術
従来、食肉屠場から工場への枝豚肉運搬は、荷台へ平積み状態が一般的であった。これにより、食肉汚損や圧迫・擦れなどの過剰負荷が生じ品質劣化していた。当社では、自社搬入用車両に独自考案の左右天秤懸垂装置を設備し、搬入運搬時の食肉への負荷を最小限とすることに成功した。
・食肉表面付着生菌等除去技術
従来、工場に搬入された枝豚肉は、そのまま精肉加工される又は、一時保存されることが一般的であった。当社では、すべての搬入枝豚肉を独自考案の冷温常温水自動高圧洗浄装置にて洗浄し、枝豚肉の初期汚損を大幅低減することに成功した。(他社無二の装置)当該技術により、枝豚肉の表面付着一般生菌数を従前比で1/10レベルとした。
○食肉の高付加価値技術
・凍結直前冷蔵技術(0℃~-5℃制御技術)
従前の業務用プレハブ冷蔵庫は、その庫内空間の温度バラツキは±1℃以上であった。このため、枝豚肉の熟成には不適切であった。規格外の庫内寸法を独自設計し高天井式高容量庫内空間を実現した。また、熱吸収装置の位置や風量・風回り等を繊細に調整して主要空間の温度バラツキを±0.1℃レベルとすることに成功した。(他社無二の技術)
・生菌発生抑制技術
枝豚肉の凍結直前冷却制御及び冷蔵庫内の一般浮遊細菌類・庫内常在菌等の増殖を日々の管理で抑制制御している。搬入~洗浄~熟成過程において、薬剤等の化学物質は一切使用していない。当社は、この卓越した管理技術を約20年かけて確立した。
・豚肉長期熟成技術
上記の(1)、(2)の技術により、枝豚肉の長期熟成製法を確立することが可能となった。枝豚肉の肉芯温度を凍結直前状態でこれを維持することは非常に困難であり精緻な温度管理技術を必要とする。これにより、豚肉の食味の向上や機能性成分の増加などの付加価値向上を実現する温度帯を発見した。特に、熟成期間による各種成分の特性を長期にわたり研究し最適熟成期間を14日と見出したことは特筆である。
・長期品質保持技術
精肉製品は、初期一般生菌数が他社製品と比し1/10レベルと低減管理されている。これにより他社製品より長期の消費期限とすることが可能となった。さらに、精肉を真空包装処理することで高い信頼性を提供できている。当該技術により、食肉の高付加価値化に成功した。(国内無二の技術)
(開発した製品の独創性)
○氷温熟成「氷室豚」の独創性
・枝肉の状態のまま凍結直前熟成(ブロック肉密封状態での熟成処理とは根本的に異なる。)
・豚肉の水分量が、ほぼ変わらない
・熟成過程で豚肉からのドリップ流出がほぼ無い
・豚肉の個体差による栄養成分バラツキが均一化してくる
○食味・食感が圧倒的に良好
・旨味成分であるグルタミン酸の含有量が14 日熟成で約2.5倍に増加
・甘味成分であるグリシンやアラニンの含有量が14 日熟成で約1.2~1.5倍に増加
・旨味、甘味、酸味、苦味がバランス良く増加
・熟成により含有脂肪の融点が低下(数℃)することで口溶けが良い
○品質保持期限(消費期限)が長い
・標準的な「氷室豚」の消費期限は、製造後2週間である。
○機能性関与成分の増加による健康増進、健康寿命延伸への寄与
・イミダゾールジペプチド(アミノ酸成分)増加の機能性として、「疲労感の軽減」「中高年の認知機能維持」の機能性表示を消費者庁にて受理済み。(届出番号:E433)
・オレイン酸増加の機能性として「総コレステロール低減、悪玉コレステロール低減」の機能性表示を消費者庁にて受理済み。(届出番号:J98)
・上記の通り、豚肉の熟成方式は唯一無二のクリマ式製造技術であり、当該製法から生産される氷温熟成「氷室豚」のアミノ酸増加や特定脂肪酸増加による健康増進機能性成分はQOL(生活の質)向上に貢献する画期的な製品である。
○開発した技術・新製品の普及度
・販売実績:2009 年6 月の発売開始以来2023 年12 月まで、累計700,000kg 以上
直近では年間平均約100,000kg の販売実績あり。