受賞者一覧
令和3年度/第43回受賞者
食品産業部門<農商工連携推進タイプ>(2021)
農林水産大臣賞
株式会社庄司製菓
代表取締役:庄司匡伸
所在地:山形県上山市
業種:米菓生地製造・販売
【功績申請の概要】
- 新商品を開発する際は優先的に県産加工米を使用することで県産米の消費拡大に貢献しており、県産米仕入量はここ2年間の推移でも約200トンの拡大を実現している。
- 地域社会だけでなく業界全体の活性化に寄与するための事業に注力。特に隣接県の米消費拡大推進のための商品開発の協力を行い、米業界の課題である消費拡大に向けた取組に利益度外視で貢献している。
- コロナ禍において極端に負の影響を受けている米穀中間業者の在庫負担が拡大し、資金不足が顕著化している中、負担軽減・現金化のために古米・古々米を年間250トンほど引き受けており、米農家・卸業者とともに米菓業界を支えていく取組に積極的に寄与している。
(農商工連携の推進)
〇国産農林水産物の利用や契約栽培の推進
・長年に渡り相手先ブランドに対応した高品質な米菓生地を多数製造しており、当社の製造技術・生地開発能力・多品種対応等は業界内でも高く評価されている。コロナ禍にもかかわらず売上は継続的に拡大している中で、県産米の使用を心掛けているため、年々県産米の割合が拡大している。
・契約栽培については、毎年200トンほどの仕入量を維持している。
〇生産者ヘの技術指導等、農林水産業への支援
・当社代表取締役が個人として、地域で後継者がおらず休んでいる農地を買い取り、さくらんぼ(園地面積4,000㎡)や柿(関根地区の紅柿:園地面積1,500㎡)の栽培・販売に取り組んでいる。さらに、今年度は行者ニンニクを地域の特産品として育てるために遊休園地1,500㎡を買い取り、来年度から収穫物を提供する予定。今後は企業として認定農業者となり、自社農産物の他に地域の農家が育てた農産物も当社の販売網で展開していくことを計画している。
・平成23年から、通常は産業廃棄物となる米のとぎ汁と上山市内の製材業者の産業廃棄物である木片を混ぜて肥料を製造し、前出のさくらんぼや柿に使用するとともに、地域農家からの希望があれば無償で提供している。
〇国産農林水産物を利用した新商品開発
・当社は煎餅生地専門企業として研究・開発に特化し、当社独自の「作り方」の技術を開発し差別化の柱としている。この技術を産み出すための製造機械を機械メーカーと設計段階から共同で開発しており、その際はできるだけ地元中小メーカーに依頼するようにしている。
・新商品には自社企画商品と取引先菓子メーカーとの共同企画商品がある。開発する商品については、品種限定商品を除き、ほぼ全てにおいて県産加工米を使用している。平成13年に開発した「ぬれ煎」はロングセラー商品となっている。平成17年に開発・発売した「黒こしょう煎」は原材料も吟味し県内産はえぬき・上山産はえぬきを使用している。
・共同開発商品として㈱王様製菓へ販売する「フリーフロム米粉チップス」は、アメリカへの輸出用商品として開発依頼され、グルテンフリー商品として好評のため、令和3年8月から本格販売の運びとなった。㈲小倉屋へ販売する「ソフト鉄板焼」は、高級スーパー向け開発商品として、当社独自の製造法によりソフトな食感に仕上げた商品で、今年の12月までには販売開始となる予定。
・㈱新杵屋の有名な駅弁「牛肉どまん中」は県産米どまんなかを使用しているが、コロナ禍により駅弁が販売減となり、栽培している農家にとっても相当な打撃となっていることから、㈱新杵屋と共同で同県産米を使用した製品「牛肉どまん中」を開発し、来年度からは新たに30トンの仕入契約を行った。
〇販売方式や販売ルートの工夫等による販売促進
・煎餅生地に特化し、長年に渡り研究・開発技術を確保し続けたことで生地屋から開発企業としての地位を確立した。特に微細煎餅生地については、日本国内で製造できるのは当社だけである。当社の生地生産量は毎年増産を続けており、国内全体に占める割合も拡大傾向を維持している。
・既存取引の実績による米農家・米小売店・中間業者・菓子メーカー・農協・自治体などとの信頼関係のみによって新たな取引先の拡大・売上増加・利益確保をあげている。
(地域農林水産業との連携、地域活動等)
〇地域社会との連携状況
・コロナ禍で米穀卸業者が保有する行き場のない加工米を積極的に買い入れ、新規開発する商品や発注相手先から要望されている増産体制の原料としている。
・令和元年8月よりNPO法人山形県自立支援創造事業舎(地元障害者施設)の「みちのく屋台こんにゃく道場」からの要請により「蔵王産黄色唐辛子を練りこんだぬれ煎」商品の開発を進め、同年12月に販売している。唐辛子単体販売より収益性が高く、同施設の収益も上がり、利用者の賃金にも貢献している。
・当社は、平成29年より山形県米菓組合副理事長を務め、また、平成11年からは発足メンバーとして全国米菓工業組合青年部の理事に就任。米菓企業の機械化省人化促進や販路拡大策としての海外輸出や機能性食品への取組の推進を図り、積極的な異業種交流を行うことに尽力している。
・ボランティア活動として、平成20年から、当社工場が面する道路沿いに相生地区保全協議会によって設置されたプランターの水かけを当社従業員が交代で毎日行っている。
〇地域の農協、漁協、地方食品産業協議会等との協力状況
・平成30年に福島県の「白河産米需要拡大推進協議会」から地元産米の消費拡大のための煎餅商品の企画依頼があり、利益度外視で食用米コシヒカリを購入し、令和元年に共同開発した商品「ダルマ」を発売した。
・異業種との共同開発事業として、平成24年にJA千葉みどりからの依頼で、地元食用米コシヒカリの消費拡大策として加工品開発を依頼され、「おふくろ煎餅」を開発し、毎年製造している。
・地域農協の下部組織である「相生地区実行組合」にて、年に6回ほど収穫状況、品質や規格調査を実施し、農協に報告している。
〇地域の雇用先としての貢献
・毎年、少人数ながら地元からの雇用を継続している。新卒者は地元高校卒業者であり、中途採用者は地域の農家の主婦が多い。当社従業員32名のうち、農家関連者は18人を占めている。全員正社員として雇用することを前提とし、休暇や時間調整など柔軟に対応できる体制を取っている。
・再雇用制度では、定年時(65歳)の賃金を基本的には据え置きし、働きたい人が働く意欲を失わない限り働いていただける環境づくりに注力している。
(食品表示法への対応)
・コンタミ主要7品目は徹底的に顧客への情報伝達を行なっているほか、特定自社企画商品については、原材料名に「地元上山産御前米33%使用」等と表記し消費者が求める安心感にできるだけ配慮した表示を工夫している。
・さらに、煎餅生地を生産する過程で原料となる米の洗米排水は、県の排出基準のおよそ10分の1程度に処理してから排出し環境負担をより抑制させることに努めている。